当センター循環器内科の鈴木医師の研究が、国際的な医学雑誌「JACC: Advances」に掲載されました。研究テーマは「心臓カテーテル治療(PCI)の後に起こる腎臓の合併症(造影剤関連急性腎障害:CA-AKI)」と、その患者さんの将来の経過に関するものです。
CA-AKIとは、心臓のカテーテル治療の際に使う造影剤が原因で腎臓の働きが一時的に悪くなる状態です。これは治療後によくみられる合併症のひとつですが、長い目で見たときにどのような影響があるのかは、まだ十分にわかっていませんでした。
今回の研究では、2008年9月から2021年10月にかけて日本の多施設レジストリ(KiCS PCIレジストリー)から集められた約8,000人の患者さんのデータを調べ、腎臓の合併症がその後の経過にどう関係しているかを明らかにしました。患者さんは治療前の腎臓の状態に応じて「低リスク・中リスク・高リスク」に分けられましたが、どのグループにおいてもCA-AKIを起こすと、死亡や心臓病の再発、心不全による入院、脳卒中といった重大なトラブルが増えることが分かりました。
特に重要なのは、腎臓のリスクが低い患者さんでも、治療後に少し腎臓の数値が悪くなるだけで、その後のリスクが約3倍に増えるという点です。つまり、ほんの小さな腎機能の変化であっても、将来に大きな影響を与える可能性があるということです。
この研究は、PCIを受けるすべての患者さんにおいて「腎臓を守る工夫」がとても大切だということを示しています。今後の日常診療での患者さんの管理や治療方針を考えるうえで、大変重要な成果となりました。
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