当センターの循環器内科 鈴木医師の論文が日本心血管インターベンション治療学会レジストリーデータ(J-PCI)を用いた左桁バイアスに関する研究論文が国際学術誌Journal of the American Heart Associationに掲載されました。
本研究は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における造影剤使用量に対する認知バイアスの影響を、日本の全国規模データベースを用いて検証した初めての研究です。
左桁バイアス(Left-digit bias)とは、数値の最左桁が意思決定に過度な影響を与える認知バイアスです。日常生活では、1,999円が2,000円よりも実際の差額以上に安く感じられる現象として知られています。医療現場においても、この認知バイアスが臨床判断に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
PCI後の急性腎障害(AKI)予防において、造影剤使用量の最適化は重要な課題です。本研究では、2018年から2022年にかけて実施された735,696件のPCI症例を解析し、血清クレアチニン値の解釈における左桁バイアスが造影剤使用量に与える影響を検証しました。
研究結果からは、血清クレアチニン値が1.0 mg/dLおよび2.0 mg/dLの閾値を超えると、造影剤使用量が有意に減少することが判明しました。
この減少パターンは、実際のAKIリスクよりも、クレアチニン値の整数値に強く影響されていることが示唆されました。
造影剤使用量の決定において、単純な数値の認知バイアスではなく、エビデンスに基づいた包括的なリスク評価の重要性を改めて認識する必要があります。今後は、このような認知バイアスを考慮した診療ガイドラインの策定や、リスク評価ツールの活用促進が期待されます。
本研究は、医療における認知バイアスの影響を大規模データで実証した貴重な成果であり、今後の医療の質改善に向けた重要な視点を提供するものです。
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