当センターの循環器内科 鈴木医師の論文が 2025年12月2日 JACC: Asia に掲載されました。
本研究では、日本の多施設共同レジストリ(KiCS PCI)のデータを活用して、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後のヘモグロビン低下と顕性出血が長期予後に与える影響について、7,145人のデータを分析した結果が明らかになりました。
顕性出血を伴うヘモグロビン低下(3.0 g/dL以上)は、2年後の主要心血管イベント(MACE:全死亡、急性冠症候群、心不全入院、脳卒中)のリスクを2.16倍に増加させることが確認されました。特に、顕性出血を伴う場合はヘモグロビン低下の程度が大きいほどMACEリスクとの関連が顕著でした。一方、顕性出血を伴わないヘモグロビン低下のみでは、MACEリスクや全死因死亡リスクの有意な上昇は認められず、この関連は弱まることが示されました。
現行の出血定義の中には顕性出血を伴わないヘモグロビン低下も出血合併症として扱うものがありますが、本研究は両者の予後への影響が大きく異なることを明らかにしました。この結果は、PCI後の出血合併症を評価する際に、検査値(ヘモグロビン低下)だけでなく臨床的な出血所見を組み合わせて判断することで、単独のパラメータよりも優れたリスク層別化が可能となることを示唆しています。今後は、顕性出血を伴わないヘモグロビン低下単独の予後的価値や、臨床的に意義のある出血イベントの定義におけるその役割についてさらなる検証が期待されます。
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