Impella

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1. Impellaとは?

Impella(インペラ)は、急性心筋梗塞などにより心臓の動きが極端に悪くなった患者さんにおいて、心臓左心室が血液を全身に送り出す機能をサポートするための補助循環装置の一つです。超小型ポンプを内蔵したカテーテルを左心室に留置し、左心室から血液を吸い上げて上行大動脈へ送り出すことで心臓のポンプ機能を補助します。心筋梗塞などで心機能が極端に低下すると心臓から全身に回る血液量が低下し、血圧が十分に維持できない状態(心原性ショック)となります。心原性ショックでは脳や腎臓などの全身の臓器への血流が低下し様々な臓器障害を来しますが、Impellaはこのような状態から脱却することを目的として使用されます。ヨーロッパでは2005年から、アメリカでは2008年から販売開始となり、日本では2017年9月から使用可能になりました。

 補助循環装置と呼ばれる、弱った心臓のポンプ機能を助けるための装置にはいくつかの種類が存在します。主な補助循環装置として、①大動脈内で心臓の収縮と拡張に合わせて風船を拡げたり閉じたりするIABP (大動脈内バルーンパンピング)、②いわゆる外付けの人工心肺であるECMO (体外式膜型人工肺:PCPS とも呼ばれます)、③心臓の中に直接植え込むタイプの補助装置であるVAD(補助人工心臓)がありますが、新たに④経皮的左室補助装置として開発されたのがImpellaになります。

 Impellaは比較的低侵襲な(傷の小さな)処置で循環のサポートを行うことができる補助循環装置であり、臓器への血流を保つことに加えて、搭載された人工ポンプが心臓の仕事を肩代わりするため、心臓が全身に血液を送るための負担が軽減され、心機能の回復に寄与する事が期待されています (これをアンローディングと呼びます)これは従来の補助循環装置とは異なるImpella独自の長所となっています。さらに重症の患者さんに対しては、前述のECMO(いわゆる外付けの人工心肺装置)と併用して使用される場合もあります。

 それぞれの機械的循環補助の特徴を表にまとめています。

2. 対象患者

「心原性ショック等の薬物療法抵抗性の急性心不全」が適応になります。特に急性心筋梗塞や劇症型心筋炎と呼ばれるような重度の心筋炎によって、心臓の血液拍出量が極端に低下してしまった患者さんに対して効果が期待されます。また前述の通り、特に心臓だけでなく呼吸不全も呈しているような最重症例では、Impellaによる左室負荷の軽減効果を期待して、ECMOと併用して使用される例もあります(併用する場合をECPELLA [イクペラ]と呼びます)。

3. Impellaの種類と特徴

Impellaにはその大きさとサポート可能な血液流量からこれまでいくつかの種類が出ていますが、現在日本で使用できるのは、Impella CP®︎Impella 5.5®︎の2種類です。

 Impella CP®︎は基本的に足の付け根にある大腿動脈から、皮膚を通じて挿入しますが、Impella 5.5®︎は人工血管を用いた外科的手術によって鎖骨の下にある動脈(鎖骨下動脈)から挿入します。留置方法の簡便さ、最大補助流量、想定される使用期間、下肢固定の必要性(リハビリの可否)などが異なりますが、それぞれの患者さんに適したデバイスを当院のハートチームで相談しながら選択しています。

*9Fr. = 3.0 mm, 17Fr. = 4.7mm, 21Fr. = 7.0mm
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