生理機能検査
生理機能検査とは
患者さんに接して身体の構造・機能を調べる検査の総称で、主な検査に心電図検査、肺機能検査、 脳波検査があります。循環器診療では心電図検査の他に運動負荷検査、心臓超音波検査、血管超音波検査、血圧脈波検査などを行います。
心電図
心臓は電気的な刺激が伝わることにより収縮と拡張を繰り返すことで、ポンプの役割を果たし全身に血液を送り出しています。心電図は心臓の電気的な活動を調べることにより不整脈や心筋症、虚血性心疾患などを検出します。当院では安静時心電図以外にも運動負荷心電図や長時間心電図も行なっております。
① 運動負荷心電図
運動により、心臓に負荷がかかった際の心電図変化を記録することにより、負荷誘発性の症状や心電図異常を調べます。虚血性心疾患や不整脈の診断、治療方針決定に使用されます。当院では運動負荷の方法としてルームランナーに似た機械を用いたトレッドミルや、固定式自転車をこぐエルドメーターがあります。
当院では必要に応じて、運動時の呼気ガスも分析する心肺運動負荷検査も行なっております。手術時期の決定や、妊娠出産のリスク評価に重要な検査のひとつですが、一般病院である当院は比較的検査予約を取りやすく、長期間お待たせすることなくスピーディーに検査結果をお伝えすることが可能です。
② 長時間心電図
日常生活の中の心電図を記録することによって、安静時心電図検査では見つけることのできない動悸や胸痛の原因となる不整脈や虚血性心疾患(狭心症)の有無を調べます。当院では24時間ホルター心電図計、長時間心電記録器(ハートノート)、携帯型心電計があります。
-24時間ホルター心電図計 (24時間心電計)
胸に5ヶ所の電極を貼り小型の検査機器を装着して、普段通りの生活を行い24時間の心電図を測定いたします。入院する必要はありませんが、測定中には入浴(シャワー)はできません。行動記録表を書いていただき症状と心電図との関連性を調べます。1日の中での不整脈が出現する時間や不整脈の頻度が分かります。夜間寝ているときも記録するため、自覚していない不整脈の検出にもすぐれます。労作性狭心症、異型狭心症などの診断に有効なこともあります。24時間の血圧も測定可能な機械もあり、自宅血圧の測定や血圧の日内変動、治療効果を判定する事にも役立ちます。
–長時間心電記録器 (ハートノート)
約10cm程度の軽量な電極一体型のコードレス心電計を胸に貼って心電図を記録します。最大7日間まで心電図を記録することができます。入院する必要はなく、使用中にシャワーや半身浴が可能です。24時間のホルター心電図では不整脈を検出することができなくても7日間記録することにより不整脈をより検出しやすくし、早期発見、早期治療に貢献します。長時間心電記録器(ハートノート)は大変便利ですがどこの病院にもある検査ではなく、クリニック等から7日間心電図記録目的にてご紹介頂いております。
-携帯型心電計
動悸や胸痛などの症状が出現した時に、その場でご自身が携帯型心電計を腹部にあてて心電図を記録します。症状が不整脈や狭心症によるものかの判断に役立ちます。機器を携帯している必要がありますが、ホルター心電図やハートノートと異なり、機器を体に装着しないため、身体的な不快感はありません。当院では7日間機械を貸し出します。
心臓超音波検査
心臓に超音波をあてて、心臓の大きさや動き、血流を観察する検査です。心臓の構造上の異常の検出にすぐれ、弁膜症、心臓肥大、虚血性心疾患、心筋症、先天性心疾患、心不全の診断、重症度判定、治療効果判定や心臓手術後の経過観察などに役立ちます。必要に応じて負荷超音波検査や経食道超音波検査を追加することがあります。
最新心エコー機器を用いて、心筋ストレイン検査、3Dエコー検査が施行可能です。抗がん剤治療関連心筋症や心アミロイドーシスをはじめとした心筋症の初期においては、従来の左室駆出率EFのみでは心筋障害を見逃すため、ストレインの低下やそのパターンにより、早期に診断することが重要です。大変便利ですが、すべての病院のエコー機器に搭載されているわけではなく、しばしば近隣の癌治療施設からもご紹介頂いております。
① 負荷超音波検査
運動や薬剤により心臓に負荷をかけた状態での心臓超音波検査になります。安静時ではわからなかった異常が負荷により顕在化してくることがあります。おもに虚血性心疾患、肥大型心筋症、弁膜症の診断、治療方針決定に用いられます。労作時息切れの原因として心臓弁膜症を疑った場合には非侵襲的で大変役に立つ診断ツールとなります。当院の運動負荷はトレッドミルとエルゴメーターになりますが、運動負荷が難しい場合にはハンドクリップや薬剤負荷(ドブタミン負荷)エコーも可能です。
② 経食道心臓超音波検査
胃カメラ検査と同様に心臓超音波のプローベを食道にいれ、心臓を食道側から観察します。通常の超音波検査では骨や肺によって心臓が観察しにくい場合がありますが、経食道心臓超音波検査ではより明瞭な画像を得ることができます。多くの場合は鎮静薬を使用して眠っていただきながら検査を行い、患者さんの苦痛にならないように配慮しています。主に弁膜症や感染性心内膜炎(心臓の感染症)、シャント疾患(心臓内に小さな穴が空いている疾患)の診断、心臓内の血栓の確認などに用いられます。最新心エコー機器を用いて鮮明な3D画像を得ることが可能で、心臓の構造をより正確に把握し、治療方針の決定や患者さんへの説明に役立てております。特に心臓手術前にリアルな心臓3D画像にて手術戦略を練ることは大変重要です。複数の超音波専門医が検査に立ち会い、見逃しがなくかつ患者さんへの負担の少ない、比較的短時間の検査を常に心がけています。
血管超音波検査
首や手足の血管に超音波をあてて、血管の太さ、動脈の狭窄や閉塞、血栓の有無、血液の流れなどを調べます。頸部や四肢の血管の動脈硬化性疾患の診断に用いられることや、静脈内の血栓の検出に用いられます。足のむくみ、痛みの原因として下肢静脈の血栓が関与している場合があります。造影剤のアレルギーにて血管造影CTが撮影できないかたや表在静脈瘤の評価目的にて近医クリニック等よりご紹介頂くこともあります。
血圧脈波
上肢(腕)と下肢(足首)の血圧を同時に測定し、動脈硬化の程度や血管の詰まり具合を調べる検査です。いわゆる「血管年齢」がわかる検査であり、動脈硬化スクリーニング・生活習慣病予防指導に役立ちます。
下肢の血管の詰まりによって、歩行時に下肢の痺れ、痛み、冷感を生じる閉塞性動脈硬化症の診断にも用いられます。閉塞性動脈硬化症が進行すると難治性の下肢の創が生じる場合があります。その際にはSPP(皮膚灌流圧)といわれる、毛細血管の血流をみる検査を追加し治療方針を決めていく場合もあります。