ロボット支援下僧帽弁・三尖弁形成術
3-1. チームによる充実したサポート体制
3-2. 垣根の低い診療科間の連携
3-3. 全室個室を特徴とする安全・安心・快適な療養環境
1. 僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症とは
心臓は全身に血液を送るポンプとして働いていており、4つの部屋に分かれています。右側の2つを右心房・右心室、左側の2つを左心房、左心室と呼び、各部屋の間は弁と呼ばれる扉で仕切られています。全身から戻ってきた血液は右心房から三尖弁を通過して右心室へと送られ、肺に血液を送ります。また肺から酸素化された血液は左心房に送られ、僧帽弁を通って、ポンプの中心的な役割を担う左心室へと送られ、全身に血液を送ります。三尖弁・僧帽弁はパラシュートのような形をしており腱索と呼ばれる多数のひも状の組織で心室に固定されており、これにより心室が収縮して血液を送る際に僧帽弁・三尖弁が完全に閉鎖して逆流を防ぎます。この腱索が引き伸ばされたり、切れたりすると、心臓が収縮する際に弁が完全に閉じることができず、結果として逆流が発生します。この状態が僧帽弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症です。この状態が進行すると心不全となります。利尿剤などの薬剤を使用する事により状態の一時的な緩和は出来ますが、病状の進行を止めることはできず、心不全を繰り返しつつ悪化することになります。
2. ロボット支援下手術の内容
手術は全身麻酔で行います。心臓と肺をサポートするため、鼠径部(足の付け根)や頚部の血管にカテーテルを挿入し、静脈血液を抜き出し、酸素を加えて動脈に送りだす人工心肺装置を装着します。ロボット支援手術は、ロボットが手術をするわけではありません。通常の手術では手術者が直接手術器具を持つのに対して、ロボット支援手術では手術用ロボットアームが器具を持ち、手術者がロボットを操作して手術を進めます。ロボット支援下手術では、右側胸部に2-4cmのメイン創部、および器具の出し入れを行うための3-4カ所の小さな穴を作成し、これらから細いロボットアームを挿入します。従来の手術と異なり、傷が小さくて済みます。また骨を切らずに済むため、手術後の体力低下の予防、および疼痛軽減が期待され、早期の退院や速やかな社会復帰も期待できます。当院では保険適用になった2019年より導入しております。
弁形成術はご自分の弁を修復する手術です。ご自分の弁をそのまま使用するので、心機能的にも良く、感染の心配も少ないことが特徴です。また、血栓予防のためのワーファリンという薬は、手術後数ヶ月間のみ飲むだけでよいという利点があります。僧帽弁に対しては形成術が主流となっており、僧帽弁閉鎖不全症では90%以上の割合で形成術が可能です。三尖弁も同様です。しかし弁の変性が強くて形成に適さない場合や形成術が困難な場合に人工弁置換術へ変更する可能性があります。
3. 聖路加国際病院のロボット支援下手術の強み
3-1. チームによる充実したサポート体制
心臓超音波専門医、心臓血管外科医、麻酔科医、看護師、理学療法士(リハビリ)、臨床工学技士、事務職員がハートチームを結成し、患者さんに最適な治療を提供します。医師の治療レベルが高い水準を維持している事に加えて、看護師、理学療法士を含めた多職種全てが高水準で機能しており、術前のケアから術後のリハビリテーション、外来まで総合的にサポートいたします。
3-2. 垣根の低い診療科間の連携
手術のリスクの高い患者様を対象にする上で、併存疾患の管理は必要不可欠です。当院では、多くの診療科が揃っており、診療科間の連携を大事にしているため、心臓疾患以外の疾患に対しても、安心して専門的なサポートを受けることができます。
3-3. 全室個室を特徴とする安全・安心・快適な療養環境
術後の経過が良好であれば、手術翌日には一般病棟に移り、リハビリに専念して頂きます(*患者様個々の経過によります)。当院は一般病棟が全て個室になっているため、静かな環境でリラックスしながら術後の体力回復に専念することがができます。ご自身のプライバシーが守られるのはもちろんのこと、他の患者さんからの感染リスクを低減することができる、安心・安全な環境を提供します。