当院での心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)の流れ

ホーム / 当院での心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)の流れ

当院で心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)を受ける予定の患者さんを対象として、検査および治療の簡単な流れをまとめてあります。

心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)は虚血性心疾患の疑いがある患者さんに行う検査です。虚血性心疾患についての詳しい説明はこちらをご覧ください。

このページで紹介している内容はあくまで当院のものになりますので、他院での検査・治療とは異なる点があることをご了承下さい。

また当院で行うとしても、患者さんの病態や状況によっては記載されている内容とは異なる流れになることもありますのでご了承下さい。

※一部動画が含まれておりますが、すべて音声は含まれておりません。

1 カテーテル室まで

1.1 病室

当院は全室個室となっており、トイレやテレビ、洗面台などが全室に取り付けられております。入院カテーテル検査・治療の場合は検査・治療の前後はこちらでリラックスしてお過ごしいただけます。

日帰りカテーテル検査の場合は、検査の前後は5階集中治療病棟にある待機室にて過ごしていただきます。

部屋の様子(広さやレイアウトは部屋によって異なります)

1.2 カテーテル検査着

カテーテル検査・治療の際には病室や待機室で専用の服に着替えていただきます。また入室前にマスクと帽子をつけていただくことになります(こちらで準備します)。

1.3 移動

歩行、車椅子、もしくは移動用ベッドを使って病室からカテーテル室まで移動します。カテーテル室は当院本館5階にあります。

1.4  カテーテル室前での本人確認

カテーテル室入室の前にご本人様確認のためお名前と生年月日をおっしゃっていただきます。

ご本人様確認の様子

1.5 ご家族様が付き添われる場合

付き添いのご家族様、ご関係者様は5階のロビーにある待合室(オープンスペース)にてお待ちいただくことになります。近くにトイレや自動販売機もありますので必要時ご利用下さい。

5階ロビーにある待合室の様子
TOP

2 検査準備

2.1 カテーテル室について

当院には2つのカテーテル室があります。性能や仕様に大きな差異はないですが、どちらの検査室を使用するかは患者さんの病態や空き状況によって担当の医師が判断します。

5階ハイブリッドカテーテル室

2.2 カテーテル台

カテーテル台は横幅がやや狭くなっています。様々な角度から心臓を観察するために放射線装置が動くためです。大柄な方でも大きく動かない限りは危険性はありませんが、後述(「3.6 姿勢維持に関する注意点」を参照)するように検査・治療中は極力動かないようにして、何かご要望があればスタッフに声でお伝え下さい。

カテーテル台

2.3 カテーテル台への移動

看護師の誘導に従って、カテーテル台に座っていただいた後、その上に仰向けに寝ていただきます。危険がないようにこちらでサポートします。ベッドで来られた方は基本的にスタッフが移動させるので、ご自身では動かないようにお願いします。

カテーテル台への移動

2.4 モニター類準備

カテーテル台に寝たときの患者さん視点

こちらは患者さん視点の画像になります。この状態で心電図、酸素計などのモニターを装着するとともに、点滴ルートの確保や確認といった事前準備を行います。造影剤の使用によって尿意を催す可能性があるので、治療の可能性がある場合や検査が長引くことが予想される場合は尿瓶を当てたり、おむつを当てさせていただくことがあります。

2.5 穿刺部位の確認

当院では基本的に左の橈骨動脈と呼ばれる手首の動脈からカテーテルをさせていただくことが多いです(脈の拍動を確認するときによく触れる手首の血管になります)。

血液透析をされている方や動脈が細すぎて穿刺ができないケース、あるいは、より太い血管からのカテーテルが望ましいような場合などでは、肘や足の付根等の別の血管からカテーテルを行うこともあります。

穿刺部位の例:左橈骨動脈

後述(「検査・治療中の「痛み」への当院での対策について」を参照)するように、当院では検査時の痛みを最小限に抑えることを目的として、予め入院されている方にペンレステープと呼ばれる麻酔用テープを穿刺部位に貼付しております。ペンレステープは、この穿刺部位の確認の際に剥がします。

清潔台

こちらは検査に使用する器具や薬剤を載せるための清潔台になります。検査や治療に必要な器具は、予め検査前に清潔な状態で、すぐに使えるように準備してあります。

TOP

3    検査開始にあたって

3.1 消毒、ドレーピング

穿刺部位の消毒を行います。基本的には殺菌効果の強いアルコールでの消毒を行いますが、アルコールアレルギーがある方などはイソジンでの消毒を行います。

上述のように、当院では手首からの検査・治療を行うことが比較的多いですが、例え手首からの検査・治療予定としていても(日帰りカテーテル検査等で治療の可能性がない場合を除き)、不測の事態に備えられるように足の付根も消毒させていただきますのでご了承ください。

消毒が終わったら清潔なカバー(ドレープ)で穿刺部以外を覆います。

ドレーピング

3.2 タイムアウト

局所麻酔を行う直前に、最後のご本人様確認と検査の準備が問題なく完了していることをスタッフ間で共同確認します。看護師がお声がけしますので、お名前(フルネーム)と生年月日の確認にご協力ください。

3.3 局所麻酔、穿刺

まず極細の針で穿刺部位の皮下に局所麻酔薬を注入します。痛みが十分に取れたことを確認してから本穿刺を行います。

◎検査・治療中の「痛み」への当院での対策について

当院では
手技による患者さんの痛みを最小限に抑えること
に注力しております。

当院では可能な限り、最も侵襲性が低いとされる手首からのカテーテル検査および治療を行っております(血管の太さや治療の複雑性などによっては別の部位からの検査・治療を選択せざるを得ない場合もあります)。カテーテル室に移動する前に、痛みを取るための麻酔テープ(ペンレステープ)を穿刺予定部位に貼付する他、本穿刺前にも極細の針で十分な量の麻酔薬による局所麻酔を行っております。また挿入するカテーテルのサイズについてもグライドシースと呼ばれる直径の小さなシース (こちらをご参照ください)を基本的に使用することで検査時の血管への侵襲性を最小限に留められるよう努めております。

治療中は風船を使って狭窄部位を拡げている最中やステントを留置している最中は胸部の不快感が出現する場合があります。強い痛みや不快感がある場合には、状況に応じて痛み止めの注射などを考慮しますので、遠慮なく申し出てください。

3.4 シース挿入

穿刺によって血管内にワイヤーが通ったら、まずシースと呼ばれる血管内と外界をつなぐための管を挿入します。シースには止血弁がついており、そこから出血することや、逆に空気が入り込むようなことは起きないようになっています。このシースから様々なタイプのカテーテルを出し入れして検査および治療を行います。

シースが左手首に入っている様子です。

3.5 抗凝固薬投与

検査・治療中にカテーテルに血液の塊がつくのを避けるため、血液をサラサラにするための注射薬をシースから投与します。この際にシースが入っている部位が熱くなったり冷たく感じることがありますが、ごく一時的なものですぐに症状は収まります。

これでカテーテルを挿入する準備は完了となります。基本的にカテーテル検査中は痛みを感じることはほとんどありませんが、もし強い痛みを感じた場合や痛みが続く場合には遠慮なく申し出てください。

3.6 姿勢維持に関する注意点

カテーテル検査および治療中は何かを訴えたり、スタッフと会話したりすることはできますが、基本的に身体を動かすことはできません。放射線装置を動かす関係上、カテーテル台が非常に狭くなっているため大きく動いてしまった場合に落下の危険性がある他、特にカテーテルが挿入されている場所を動かしてしまうと心臓や血管をカテーテルによって傷つけてしまう可能性もあり非常に危険なためです。そのため鼻がかゆい、帽子やマスクがずれた、腰が痛い、足がしびれる、寒いといった場合でも、ご自身では決して動かず必ず先にスタッフに申し出るようにしてください。

なお検査中は眠っていただいたり、咳をしていただいても構いません(検査・治療の都合で起きていただく必要がある場合には、その際にお声がけさせていただきます)。

TOP

4    検査中

4.1 術者

当院でよく行われている、左手首からカテーテルを入れる場合は、写真のように術者が身体を跨いでカテーテルの操作を行います。

検査・治療は基本的に2人以上の医師で行い、第一術者がカテーテル自体の操作を、第二術者がカテーテル台や放射線装置の操作を行います。

検査中の患者さんと術者:会話も可能です。
検査・治療中の第一術者と第二術者

4.2 カテーテルの種類

冠動脈や大動脈の形に合わせて、異なる形状のカテーテルを使い分けます。最もよく用いられるのは、左冠動脈用がジャドキンス・レフト、右冠動脈用がジャドキンス・ライトという名前のカテーテルになります。

基本的に検査のときに用いられるのは安全性の高い「引っ掛ける」形状のカテーテルです。一方で治療の際には、バルーンやステントなどの器具を持ち込むための「押し込む」形状のカテーテルを用いることがあります。

4.3 造影剤の注意点

検査中、カテーテルを通じて血液中に造影剤を流します。造影剤はカテーテル検査を行う上で必須になりますが、アレルギーを生じやすい薬品であることも知られております。検査中に皮膚のかゆみや呼吸器症状、吐き気などを感じられた場合には、アレルギーの可能性もありますので、すぐにスタッフにお伝え下さい。

4.4 放射線管球の動き、台の上下

冠動脈造影では、動脈の狭窄や閉塞の見落としがないように様々な角度から冠動脈を観察します。このときに放射線装置が動いたり、台が上下左右に動いたりします。装置にはセーフティ機構が備わっているため、患者さんに機械が強く当たったり、機械の動きによって危険が及ぶことは基本的にないですが、装置につけてある清潔用のカバー袋が稀に顔や身体に当たることがあります。当たったことに気づいた場合やカバーが近くて不快な場合はスタッフにお伝え下さい。

4.5 虚血機能評価

冠動脈造影検査によって冠動脈が実際に狭くなっていることがわかった時は、治療の必要性を判断するために、続けて特殊なワイヤーによる虚血機能評価を行うことがあります。

心臓の筋肉に運ばれる血液量が、狭窄病変によって重度に低下している場合は、血流量を改善させるためのカテーテル治療や手術の必要性が高まります。しかし一方で、冠動脈の血流を調節している身体の仕組みは非常に複雑で、この「血流量」を冠動脈造影検査での「見た目(狭窄率)」だけで判断することは難しいことが分かっています。例えば、同じ狭窄率50%の病変であったとしても、病変の長さや下流にある心臓の筋肉量などによって、その50%の狭窄による血流低下の重症度は全く異なります。このようなことから、冠動脈の血流改善治療(カテーテルの場合はステント留置)をすべきかどうかは、その狭窄の「見た目」ではなく「血流量の低下率」によって決めることが適切であると考えられています。この血流を測定するための検査はFFR検査と言い、特殊なワイヤーを冠動脈内に挿入することで、狭くなっている病変の前後で血管内の圧を測定し、狭窄によってどれだけ血流が低下しているかどうかを測ることができます。

最近では、この従来のワイヤーを使った血流測定に代わる代替方法として、冠動脈の血流解析ソフトウェアが開発されました。その代表的なものとしてquantitative flow ratio (QFR)というソフトウェアがあり、当院は日本で先駆けて実装されています。詳しくはこちらを御覧ください。

4.6 検査中の視点画像・動画

前(天井)を向いている時
下(足元)を向いている時

こちらは検査中の患者さん視点画像・動画になります。検査の映像が映し出されるスクリーンも角度によっては見えますが、無理に見ようとして起き上がるような行為はおやめください。

4.7 追加検査

冠動脈造影検査で治療が必要となるような冠動脈狭窄がなかった場合、検査終了となる場合と、追加の検査を行う場合があります。追加の検査が必要となる可能性がある場合は、同意書お渡し時の説明の時点でその可能性を説明しております。

冠攣縮性狭心症という病態が疑われる場合は冠攣縮誘発試験を、冠微小循環障害という病態が疑われる場合は冠微小血管抵抗値の測定検査などを行います。

TOP

5    治療

冠動脈造影検査の結果、カテーテル治療が必要と判断された場合には、後日改めて治療を行うか、そのまま検査から治療に移行します。検査からそのまま治療を行う可能性がある場合には、予め検査説明・同意書お渡しの時点でその可能性を説明し、治療についても同意をいただくようにしております。

なお入院を予定していない日帰りカテーテル検査の場合は同日中のカテーテル治療はできませんのでご了承ください。また検査後の治療を予定されている場合でも、カテーテル検査の結果によっては治療を別日程としたり、カテーテル治療ではなく外科手術が必要になる場合もございますのでご了承ください。

検査から治療に移行する際には、カテーテルを治療用のものに入れ替えたり、血液をサラサラにするための薬の追加投与などを行います。その他の注意事項についてはカテーテル検査とほぼ同じですが、バルーンを膨らませている時やステントを留置している時に胸部に不快感が生じることがあります。もし胸の症状を自覚された場合は身体を動かさずに声でスタッフにお伝え下さい。

当院での治療の特徴として、様々な病変や状況に対応可能な、豊富なモダリティやデバイスを取り揃えております。

例えば高度の石灰化を伴う狭窄病変の場合は、これまではドリルで削り取るような治療しかありませんでしたが、近年「ショックウェーブカテーテル」という衝撃波を使った、より安全な治療が当院でも行えるようになりました。ショックウェーブカテーテルについて、詳しくはこちらをご覧ください。

その他、カテーテル治療について詳しくはこちらをご覧ください。

TOP

6    検査・治療終了

6.1 止血手技(TRバンド)

検査・治療が終了し、シースを抜去するときには止血が必要になります。静脈の止血とは異なり、動脈の止血の場合は数時間にわたって圧迫をする必要があります。

手首からの検査・治療を行った場合には、下の写真にあるような専用バンドを巻いて止血を行います。TRバンドといって、空気をバンドの中に注入することでゴム製の風船が膨らみ、穿刺部の圧迫止血を行います。

6.2 サインアウト

最後にどのような検査・治療を行い、どのような結果が得られたか、患者さんの今の状態、退室後の注意事項、提出用の検体はあるか等の情報をスタッフ全員で確認・共有し、終了となります。

6.3 結果説明

カテーテル検査・治療の結果説明は担当医から直接行います。検査・治療の終了時に簡単な説明を口頭で行い、後に病室に伺って詳しい説明や今後の方針をご相談させていただきます。

待合室にご家族様が待機されている場合は、先に口頭で結果をお伝えすることもあります。

6.4 帰室

モニター類を外して、カテーテル室を退出する準備が整ったら、元の部屋に戻ります。入院中の場合は病室へ、日帰りカテーテル検査の場合は5階にある控室へと戻ります。入院中で、5階の待合室にご家族様が待機されている場合は、移動の際に看護師が呼びかけますので一緒に部屋に戻ることになります。

車椅子やベッドといった移動の方法は、基本的にはカテーテル入室時と同じことが多いですが、足の付根からカテーテルを挿入した場合や、検査・治療中に鎮静薬を使用した場合にはベッドを使用して戻ることになります。

TOP

7    帰室後の注意点・退院

7.1 穿刺部位による注意点の違い

手首から検査を行った場合は概ね4-5時間程度バンドを装着します。肘や足から検査を行った場合(「2.5 穿刺部位の確認」を参照)は部位と止血方法に応じて担当の医師が判断します。特に足の付根から検査・治療を行った場合はしばらくの間(少なくとも3時間以上)ベッド上で安静にしていただく必要があります。手首からのカテーテルの場合には、終了後から歩いていただいても問題ありませんが、穿刺した方の手首の過度の屈曲や強く力を入れることは避けてください。

7.2 穿刺部位から血が出た場合や腫れてきた場合

ナースコールを使用してすぐにスタッフを呼んでください。バンドや圧迫帯はご自身では絶対に外さないようにお願いします(スタッフが来るまで出血部位をバンドや圧迫帯の上からご自身で押さえていただくのは構いません)。

7.3 日帰りカテーテル検査の場合

基本的に朝9時15分からの検査となり、30分〜1時間程度で検査が終了します。検査前後は5階にある専用の休憩室で休んでいただきます。一般的には午後3時頃に止血が完了し、帰宅可能となる場合が多いですが、止血に時間がかかる場合には夕方以降の帰宅となる可能性もあります。

7.4 日帰り入院の場合

日帰り検査の場合と同様、午前中に検査を行って、午後3時頃以降に退院できる可能性があります。検査前後は病室で過ごしていただきます。

7.5 翌日の退院時間の目安・注意点

一般的な入院カテーテル検査・治療では、翌日の朝に問題がないことが確認できれば朝10時頃に退院の予定となります。

7.6 帰宅後の注意点

カテーテル検査をした当日は、お風呂に入っていただくのは構いませんが、カテーテルが入っていた場所は湯船につけず軽く流す程度に留めておいて下さい。翌日以降は湯船に浸かっていただいても構いません。ただし担当スタッフより個別に指示があった場合はそちらの指示を優先して下さい。

もし帰宅後に穿刺部位から出血があったり、腫れてくる、強い痛みやしびれが残るなどといったことがあれば当院 (03-3541-5151)までご連絡下さい。

TOP