心不全

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心不全とは?

心不全とは、心臓のはたらきが弱ってしまい、血液の巡り(循環)が滞ることで肺に水が貯まってしまい、息苦しくなる病気です。心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしますが、これが弱ってしまうと血液の循環が悪くなります。心臓のポンプの機能が悪くなると、全身を巡って心臓に戻ってくる血液が心臓の手前の臓器である肺で渋滞を作ってしまいます。これを「肺うっ血」といって、これが原因で、心不全の時には肺に水が貯まってしまうのです。また、血液の渋滞が足まで至ると、足のむくみの原因にもなり、全身の疲れなどが出現します。症状は「歩行など体を動かした時の息切れ」「ベッドに仰向けになった時の息苦しさ」「足のむくみ」などがありますが、「数日単位で体重が急激に増えた」「痰が増えた」「咳が増えた」「疲れやすくなった」など多彩な症状で発症することも多く、症状だけでは心不全の診断は難しいことがあります。

心不全の原因

心不全の原因はさまざまです。一般的に、次のような状況が心不全を引き起こす要因となります:

  1. 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症):心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)が動脈硬化などで狭くなり、心臓に十分な酸素や栄養が行き渡らずに心臓の働きが落ちることがあります。このような状態に至るまでには、進行した虚血性心疾患があることが多く、長年の糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などが背景にあることがほとんどです。
  2. 心筋症:心臓の筋肉(心筋)がなんらかの原因で弱くなったり、固くなったりすることでポンプ機能が低下することがあります。この心臓の筋肉の機能低下は、高血圧、アルコール、遺伝子異常、慢性的な心筋の炎症(心筋炎)などがありますが、原因が分からないことも少なくありません。
  3. 心臓弁膜症:心臓の中で血液の逆流が起きないためにある弁の機能が落ちる(弁膜症)ことで心臓に負担がかかることがあります。その結果、心不全が生じることがあります。
  4. 不整脈:不整脈により脈が極端に速くなったり、遅くなったりすることがありますが、これにより血液の循環が悪くなることがあり、これが原因で心不全となることがあります。
  5. その他の全身的要因:全身的な内分泌や代謝障害、炎症性疾患、栄養不良、薬物、化学物質など、心不全の原因が心臓以外の要因に関連している場合もあります。

心不全は多くの要因によって引き起こされるため、それぞれの患者さんの状態に合わせた適切な検査と治療が必要です。原因を特定し、適切な治療を行うことが重要となります。

心不全の診断

血液検査:貧血の有無や肝臓・腎臓に負担がかかっていないかを確認します。心臓に負担がかかると分泌されるBNPやNT-proBNPといったホルモンの測定も行います。

胸部X線:心臓が大きくなっていないか、肺に水が貯まっていないかを確認します。

心電図:虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)を疑う所見や不整脈の有無などを確認します。

心臓超音波検査 : 心臓の収縮の程度や弁膜症の有無など心臓の機能を評価します。

心臓CT/核医学検査/FDG-PET/心臓MRI :虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)や心筋症の評価のために行います。

心臓カテーテル検査・心筋生検:心臓内の血圧を測定したり、心臓の筋肉に血流を送る冠動脈に問題がないかを確かめます。心筋生検は、カテーテルで心臓の組織を採取して調べる検査です。この検査は、心筋症の診断に有用です。

心不全の治療

薬物治療:薬物療法は心不全治療の中心となる治療となります。心臓の収縮力が低下した心不全では、死亡や心不全による再入院のリスクを低下させることが証明された複数の薬剤があり、これらの薬剤をいくつか内服します。これらの内服薬には以下のものがあります。

・アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害薬)

・アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)

・アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)

・ベータ遮断薬

・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)

・ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2阻害薬)

この他に、心不全の症状などを改善させる利尿剤があり、これらの薬剤を組み合わせて治療を行います。

また、心臓の収縮力が維持されている心不全(このような場合は心臓の筋肉が固くなって心臓が柔軟に広がらず、十分な量の血液を受け止められない状態がほとんどです)では、有効性が示された薬剤はやや限られています。そのような中でも、SGLT2阻害薬は予後を改善することがわかっており、この薬剤を利尿剤と併用して使用します。

その他、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬やIfチャネル阻害薬も当院で採用しており、これらの薬剤を駆使して心不全治療を行なっています。また、心筋症の一つであるサルコイドーシスはステロイドなどの免疫を抑える薬が有効であり、トランスサイレチンアミロイドーシスはタファミジスという薬が有効です。

当院はタファミジスを導入できる都内でも限られた施設になっています。

弁膜症に対する治療:外科手術やカテーテル治療(TAVIMitraClip、MICS、ロボット手術など)といった治療を提供しています。(詳しくは弁膜症をご覧ください。)

虚血性心疾患に対する治療:薬物治療、カテーテル治療、バイパス治療といった治療を提供しています。(詳しくは虚血性心疾患をご覧ください。)

不整脈に対する治療:カテーテルアブレーションやペースメーカ、植え込み型除細動器といった治療を提供しています。(詳しくは不整脈をご覧ください。)

重症心不全に対する治療:薬物治療だけではコントロールが難しい場合は、経皮的心肺補助装置(ECMO)やカテーテル型の経皮的左室補助装置(IMPELLA)といった心臓をサポートする機械を使用して治療を行なっています。

慢性心不全看護:当院では慢性心不全看護認定看護師が、「心不全看護外来」退院後の治療と生活のサポートをしております。より詳しく知りたい方は下方にあるリンクより専用ページをご覧ください。

緩和ケア:心不全の患者様はさまざまな苦痛を抱えているため、終末期医療に至る前から、患者様やご家族の生活の質を向上させるために、当院では緩和ケア科や訪問看護ステーションと連携し、在宅医療を含めた心不全緩和ケアのサポートを行なっています。

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